第1回会計税務コラム【~買い手サイドの心構え~】公認会計士 水谷是繁

2017年5月11日

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総合

第1回会計税務コラム

【~買い手サイドの心構え~】

公認会計士 水谷是繁

具体的なDDの話に入る前に、まずは今回と次回でM&Aを検討するときの心構えを買い手側・売り手側の立場に分けて、お話ししたいと思います。

今回は飲食の運営会社もしくは飲食店舗を買収しようとする買い手側の心構えについてです。

(※なお、「買収」という用語は一般的にはあまり良い印象の用語ではないかもしれません。が、本コラムでは純粋に金銭を対価として法人や事業を取得することについて「買収」という用語を用いることがありますのでご了承ください。)

 

1.専門チームを立ち上げる

M&A案件については社長のトップダウンで決定するケースがほとんどですが、会社の将来を見据えてエリアマネージャーなどの幹部社員にも関与させたほうが良い場合もあります。また、特に買収資金を借り入れ等で調達することを予定している場合には、経理担当者や顧問税理士も早い段階から巻き込んだほうがスムーズです。

M&Aは組織への影響が非常に大きいため、一般論としては買収が決定する段階まで店長クラス以下のスタッフにはオープンにしないほうが良いでしょう。

 

2.人材、ノウハウ、取引先を確保する

売手側企業において、M&Aを機に優秀な人材や優良な取引先が抜けてしまうケースが多く見られます。

買手側企業はこの現実をよく理解しておくべきであり、M&Aにあたっては売手とコミュニケーションを取り優秀な人材や優良な取引先の確保に努力すべきです。

飲食店舗・飲食事業の価値はスタッフの質・店舗の立地・内装・提供する飲食物のクオリティなどの要素から成っていますが、買収対象の強みと自身の事業の強みを見比べて買収後に維持しなければならない要素について優先順位を付けて戦略を練ることが重要です。

 

3.買収後の事業計画を練る

M&Aによってどのようなメリットがあるのかを具体的・客観的にシミュレーションするため、買収後3年間程度の事業計画を策定して、それを前提に最終意思決定を行う必要があります。

具体的には対象企業・対象事業の決算書等を入手して、これをベースに主にコストの要・不要を中心に損益の調整を行い、買収後に考える施策を数字に落とし込んで反映させるという作業になります。

実際問題として経営者自身が事業計画を作成するのは困難を伴うことが多いため、有能な経理担当者や顧問税理士、M&Aについて助言を受ける公認会計士などにサポートしてもらうことを検討しましょう。

この事業計画の策定は非常に重要です。事業計画をしっかり作成しておく意義は次の3点に集約されます。

(1)対象企業・対象事業が買収後に本当に儲かるのかを、数字に落とし込んで客観的に判断するため

(2)買収後の計画と実績のギャップを分析するベースを作り、買収後の経営管理に役立てるため

(3)事業価値算定の根拠資料とするため(詳細は事業価値算定のコラムで後述します。)

 

4.各種専門家を手配する

買手にとってデューデリジェンス(買収監査)は、対象会社を取得すべきか否かの意思決定のための核心となる情報を提供してくれるため、非常に重要です。そのためには、M&Aに精通した弁護士や公認会計士に関与してもらうことが必要です。

あてがない場合には、M&A仲介会社や顧問税理士等から紹介を受けて、できれば複数の方から見積もりを取って決定することが望ましいでしょう。

また、M&A仲介会社の選定も重要です。M&A仲介会社の機能は大きく分ければ「売り手と買い手のマッチング」と「M&A成立までの交渉・調整」ということになります。

いずれの機能にとっても飲食業界に精通したノウハウがあることが重要であり、特に「M&A成立までの交渉・調整」の役割は不動産の仲介などと同様に物理的・心情的に相対で進められない話を調整・整理してくれますので、信頼できるアドバイザーに依頼することが大切です。

 

特に初めてM&Aに触れる方にとっては慣れないことの連続ですので、ご自身の思いに共感してくれる社内人材や外部の専門家を巻き込んで適材適所で話をスムーズに進められるように、早い段階から良き相談相手を見つけていただきたいと思います。