「スタッフが全員残る前提で買取ります」はできる?できない?

2017年4月18日

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「スタッフが全員残る前提で買取ります」はできる?できない?

M&Aにおける人材採用の背景

飲食店の社員採用は年々厳しくなってきております。
M&Aを選択する動機の一つに、

「居抜き物件を契約しても人材採用が追い付かず、出店計画が進まないから」

という話をよく耳にします。
小規模な飲食店M&Aを効果的に活用する、良い選択動機だと思います。
しかし、そのケースによくある買手側の意思決定として、例えば5店舗の居酒屋を事業譲渡する場合に、

「店長が全員残る前提で買取ります」

というもの。
これは残念ながらほぼ100%に近い確率でできません。
それは何故でしょうか?

成約までの流れと人材採用の課題

① 店舗視察
② 損益、財務など資料検討
③ 金額交渉
④ 契約、家主承諾
⑤ 従業員面談(引継ぎ開始)
⑥ クロージング(引渡し・代金決済)

案件内容によりケースバイケースですが、ざっくりと成約までの流れを記すと上記のイメージになります。
売主がスタッフに譲渡を告知するのは相手先が確定してからとなります。また、スタッフが新オーナーの下で継続雇用を希望するかどうかは新オーナーの魅力、雇用条件、雇用形態によっても意思決定は変わってきます。
ですので、売手側のリスクを加味したスタッフへの告知タイミングの問題、個人の働く自由な意思決定、就業先を決めるにあたっての要素を考えた場合にすべてのスタッフの雇用を前提とした譲渡契約は考えにくいというのが現実です。
また、雇用が継続できたとしても退職リスクは常に伴います。

売主と新オーナーの誠実な努力によってスタッフの雇用を継続させることができるよう、引継ぎの段取り、方法論はこれまでの実績の中で蓄積したノウハウがあります。しかしM&Aが人材採用の課題解決を100%担保できる取引ではないことを買手は認識して取り組む事が重要です。

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