原価率の設定は何%にするのがいいですか?
業態にもよりますが、飲食店の原価率は30%以下にしなければ健全な経営は厳しいといえます。加えてサイドメニューの場合は、さらに原価を下げてより多くの注文を取らなければいけません。利益を得るには原価を下げるのがセオリーですが、あまりに行き過ぎるとメニューの質を維持することができなくなります。そのため原価率を設定するなら、まずは30%程度を目安とすると良いでしょう。
ただし例外もあります。原価が高く良質な食材を使うことが他店との差別化となり、結果的に多くの集客に繋がるケースも考えられるのです。この戦略が成功するのは、顧客滞在時間を短くする、人件費がかからない仕組みを作る、設備管理費を少なくするなどといった工夫がしっかりと効果を発揮した場合となります。つまり原価を高くしている分、意識的にその他で利益を確保するようにしなければいけません。
株式会社TKCが行った、平成27年4~6月に決算を終えた企業を対象にした調査では、黒字飲食店の原価率は30%強という数値が出ています。飲食店事業は参入障壁が低く、新店舗開業は後を絶ちませんが、閉店率は2年未満の店舗で49.7%ともなります。
そのような状況のなかで飲食店が生き残るには、明確な経営戦略を立てることが必須となってきます。経営戦略は、立地、人件費、家賃、業態などの諸条件によって変える必要があり、決してこれといった正解があるわけではありません。
一例ですが、大人数が短期滞在するファーストフードと、少人数が長期滞在する高価格帯のレストランでは利益を生むための経営戦略はまったく異なります。前者であれば、原価率を高く設定しても大人数が訪れることで十分な利益が見込めます。後者であれば、アルコールのような原価率の低いメニューを多く注文してもらうことで利益を確保することができます。
このように顧客数や滞在時間に着目するだけでも経営戦略には大きな違いが生まれます。飲食店経営においては多勢に流されたり、流行に乗ったりすることなく、あらゆる要素を分析し、店舗に合った戦略を導き出すようにしてください。